「トライアル就労」が会社に新しい風を吹かせました。
株式会社ボンドバンド/代表取締役 森岡様
取締役開発事業部執行役員 高橋様
エンジニア 赤田様 田中様
期待したのは、成長産業で正社員を目指す人の〝覚悟と意識〟
主に鉄鋼業に携わる中小企業の基幹システムや、販売管理、在庫管理といった各種システムを開発しているボンドバンド社。SESから業態を進化させ、現在はエンドユーザーのためのプロジェクトを数多く手掛けられています。
スタッフは18名で、ほぼすべてがシステムエンジニア。これまで、リファラル採用や求人広告サイトを活用して人材を確保されてきましたが、フルスクラッチで開発業務を担える技術者はどうしても売り手市場。代表の森岡さんは、一般的な採用メディアを介したリクルーティングには「限界もあった」と語ります。
森岡代表 「面接の場面では、皆さん〝よそゆきの言葉〟でご自身をアピールされます。リファラル採用はある程度事前に情報が得られるので信用できるのですが、通常採用の場合、やっぱり1回や2回の面接では、その人の本当のスキルや人間性までは見抜けません。当社の採用課題はまさにそこにありました」
成長産業人材雇用支援事業を知ったのは、取引銀行から類似事業を紹介されたのがきっかけだったのだとか。2か月のトライアル就労を経て、企業と求職者の双方がマッチング度合いを確かめながら採用を目指せるという画期的な仕組みはもとより、成長産業人材雇用支援事業に登録する求職者の質にも期待を寄せる部分があったといいます。
森岡代表 「成長産業に飛び込みたい。技術者としてキャリアアップしたい。きっと、そういう明確な覚悟を持った求職者さんが多いのだろうと考えました。また、正社員になりたいという意識の高さにも、他の採用媒体とは異なる期待感がありました。そこで採用の間口を広げ、経験不問、年齢も55歳までと、幅広い人材を募ることにしたのです」
その後、事務局スタッフの紹介で3名のトライアル就労を実施。うち2名の求職者を正社員として採用することになりました。
森岡代表 「今回、男女3名の求職者さんをお迎えしましたが、残念ながら1名は離脱してしまい、たまたま2名の女性が採用につながりました。従前からのイメージですと、この業界は男性中心の職場だと思われがちです。しかし、エンジニアという職は、女性がフィットする部分もあり、性差による向き不向きはほとんどないといっていいですね。働き方改革で残業はなくなり、私たちもワークライフバランスを重要視しています。」
トライアル就労を通して生じたもう一つの相乗効果
採用後、新人として入社したお二人を指導してきたのが執行役員の高橋さんです。
高橋取締役 「通常採用の場合、弊社では入社後に実施してもらう教育研修プログラムを用意しています。しかし、社長からは〝むしろ彼女たちの人となりや素養、勤務態度をじっくり見極めたい〟という相談が事前にありました。そこで、トライアル就労ではあえて本業に沿ったサポート業務に就いてもらうようにしたのです。2か月後の正社員採用から逆算して、現場に馴染めるよう、スムーズにスイッチできるよう、プログラミングの学習と並行してリアルな仕事を取り入れました」
高橋さんは、とにかくスタッフ同士のコミュニケーションが取りやすい環境の整備に努め、どんなに些細なことでも相談ができる雰囲気づくりに意を注いできたといいます。コロナ禍以降に加速したリモートワークにおいて、いつでも社員間で有効活用できるようにと設けていたバーチャルオフィスの積極活用もその一つです。
高橋取締役 「ある程度のキャリアがあるとリモートワークの方が仕事は捗ります。自宅からでも気軽にアクセスできるバーチャルオフィスは、チームメンバーがチャットで進捗状況を確認し合ったり、連携を要する場面で連絡を取ったりする時に重宝します。でも、意外と若いスタッフは出社する傾向にありますね。わからない時は面と向かって誰かに聞いた方が早いと感じるのかもしれません」
また、今回採用に至ったお二人は、普段からスマホを触り、ITリテラシーも高い、いわばデジタルネイティブ世代。高橋さんは「私が新人だった頃よりも地に足がついている印象があります」と高く評価されていました。
高橋取締役 「私自身も10年ほど前、まったくの未経験からこの業界に飛び込みました。新人の二人と話していると、すんなり理解してもらえることが多いですね。ただ、その一方で、日頃私たちが当たり前のように使っている専門用語や、知らず知らずのうちに身に付いていた概念を、すぐに理解してはもらえないことにも気づかされました。そういえば自分もそうだったなぁ、と初心に返ることがしばしば。これはお客様との円滑なコミュニケーションを図る上でも重要な気づきでした。また、技術面では他のスタッフもメンターとして彼女たちを指導していますが、教える側にも成長があって、社内に良い影響が広がっています。トライアル就労がもたらした思いがけない相乗効果。副次的な化学変化といえそうですね」
さらに森岡代表は、トライアル就労を開始して最初の1か月でわかったことがあるといいます。
森岡代表 「今回採用した2名に共通していたのは、スタッフたちとさまざまなコミュニケーションを取っていく中で、相手の目をしっかり見て話していること。この業界には〝一人称でできる〟という言葉があって、誰かの力を借りずとも自分一人で業務を遂行できる人が尊ばれる傾向があります。しかし、仕事は一人ではできません。一人称で完結できる能力は素晴らしい素養ですが、チームとして動かなければならないシーンが必ず出てきます。彼女たちはチームワークを大事にできる人間だということが早い段階で確信できました。これもまたトライアル就労のメリットでしょうね」
勇気を持って前へ前へ。不安がやがて道を拓く原動力に
さて、この事業を通して正社員となったお二人にも印象を伺ってみました。
職業訓練校でIT技術を学んでいた赤田さんは、今年に入って間もなくトライアル就労に挑戦し、同社の正社員となったシステムエンジニアです。訓練校に通う以前は全国各地を旅しながら、ゲストハウスや宿泊施設で短期のリゾートバイトに従事していました。(なお、今回の取材では赤田さんが出張中だったため、リモートでご出演いただきました)
赤田さん 「私が働いていた宿泊施設でも予約システムが積極的に活用されていましたし、ワーケーションでそこに滞在されたプログラマーさんと知り合ってお話を伺ううちに、システムエンジニアリングに興味を持つようになったんです。そこで、私自身もIT業界で働きたいと思うようになり、職業訓練校に通うことにしたんです」
訓練校で支援事業の存在を知った赤田さんは、さっそく卒業後に登録。程なくしてボンドバンド社でのトライアル就労に臨みました。
赤田さん 「プログラミング自体は訓練校でも学んでいたのですが、実戦で通用するのかどうか不安がありました。今、考えるととても幸運だったのですが、ちょうどこのタイミングであるプロジェクトが始まり、ソースコードを扱う作業に就かせていただきました。戸惑いや不安が増えていく毎日。ところが、目の前に壁が立ちはだかるたび、逆に燃えてきたんです。とにかく、できることをやってみよう。一連の作業を終えた際には〝なんとか頑張っていける〟という手応えを感じました」
一方、赤田さんから約5か月遅れで入社した田中さんも、前職は飲食店勤務という異色の経歴の持ち主。IT業界はまったくの未経験からのチャレンジでした。
田中さん 「プライベートでウェブサイトを制作していて、多少はプログラミングもわかっているつもりでした。でも、現場で働いてみたら知らない言語がいっぱい。仮にわからないことが一つ解消されたとしても、次から次へと新しい〝わからない〟が出てくるんです。バーチャルオフィスにアクセスして先輩の姿を見かけるたびに、いろんなことをお聞きしています」
田中さんは企業見学に訪れる前、ご自身の経歴に悩まれている部分がありました。前職からややブランクがあり、社会経験そのものが少ない上にデジタルは未経験。一生懸命頑張りたいという気持ちは人一倍あったものの、「心が折れちゃったらどうしよう」という心配がついて回ったそうです。
「でも、先輩たちが親切に教えてくださって。諦めない気持ちやプラス思考を携えて前を向けば、一つひとつできることが増えていくたびに充実感が得られます。いつしか、毎日会社に通うのが楽しくなっていったんです」
「いつかは一人で仕事ができるようになり、逆に先輩たちからの質問にもしっかり答えられるようになりたい」と田中さん。また、赤田さんも「仕事を任せてくれる先輩たちを信じて、引き続き知見を深めていきたい」と、今後の抱負を語ってくださいました。
森岡代表 「私たちが求めているのは技術者です。でも、その前に一人の人間であり、大切な仲間です。今回の2名についても、人間性が良かったから採用したようなものです。これからますます業務が増えていくことが予想されます。事業者と求職者の双方にとってプラス要素が大きい成長産業人材雇用支援事業は、今後も大いに活用させていただこうと考えています」
- 事例紹介/企業プロフィール
- 株式会社ボンドバンド
- コーポレートサイト:https://bondband.jp
- 東京都台東区浅草橋3-32-6 HOKI BLDG.7F
- 事業内容:ウェブサイト制作、システム・アプリケーション開発
- 従業員数:18名
- 取材撮影:2024年7月
- ※本事業を活用し、2名正社員として採用
【前へもどる】