CASE4導入事例
AAAコンサルティング株式会社様
正社員採用は初の試み。 そのきっかけを与えてくれたのが、この支援事業です。
AAAコンサルティング株式会社/代表取締役社長 田所様 経営管理部ゼネラルマネジャー 帆足様人材=資産。採用は経営を左右する最優先課題
開口一番、「採用課題は、常に経営課題でもあります」と話すのは、AAAコンサルティングの代表としてインタビューにご協力してくださった田所社長です。 確かに人材は企業にとって大切な宝。時に「人財」と言い換えられるほど、重要な資本であり、代えの利かない財産かもしれません。しかし、人材の採用が経営課題に直結するとは具体的にどういうことなのでしょうか。
田所社長「私たちはちょうど10年前、不動産業界におけるプロパティマネジメント……すなわち賃貸・分譲マンションやビルの管理から始まった会社です。今でこそ不動産経営コンサルティングや売買・賃貸の仲介、開発、建築と、業務領域は各方面へ広がっていますが、管理業務は現在も変わらず弊社の屋台骨となるビジネスです。携わるスタッフには、さまざまな知識やノウハウが必要な上、街の不動産屋さんなど仲介会社様からの問い合わせ、入居者様からのご相談や不意のクレームに対しても柔軟に解決を目指す対応力が求められます。こうした業務に関わるスタッフをいかに集め、育てるかが、ある意味、経営課題の一つに挙げられるわけです」
同社は、数年前にコールセンターを開設。これまで培ってきた不動産管理のノウハウを活かし、自社で取り扱う物件だけでなく、他の管理会社から委託され、業務を代行するビジネスをスタートさせました。
具体的には、仲介会社からの空室確認や問い合わせを担当するリーシングセンターと、一般入居者からのリクエストやクレーム処理を担当するカスタマーセンターがそれぞれ電話対応にあたると同時に、各種契約書類の作成といった幅広い事務作業をバックアップするビジネスサポートセンターが連携しあいながら、煩雑な管理業務の一端を担うのだといいます。 今では4拠点にコールセンターを置き、50社以上の管理業務をサポートするカスタマーサービス企業のパイオニアとして認知されています。
田所社長「現在、弊社のスタッフは100名近くにのぼり、ほぼ90%はコールセンターに所属するオペレーターです。大手をはじめ、さまざまなクライアント企業様から管理業務を請け負っていますが、お問い合わせの対応には、それぞれの企業様のカラーや理念が反映されます。マニュアルに沿った画一的なやり方では、各企業様の個性を削いでしまうことになりかねないため、弊社スタッフは各企業様のナレッジやスタイルを熟知した上で業務に臨みます。クライアント企業様と同じ思いで、仲介会社様やお客様からの声を受け取るんです」
本来業務の傍らでお客様対応を行なうと、その時々の繁閑状況や、対応にあたった窓口担当者の経験や能力などによって、サービスに差異や濃淡が生じてしまうことがあります。確かにクライアント企業の側に立てば、お客様対応に特化した専門のプロ集団がいれば安心です。AAAコンサルティングのスタッフが数名単位でチームを組み、いわばそのクライアント企業のカスタマーサービス部門として動くことになります。
田所社長「お問い合わせの電話が弊社のコールセンターに届くと、お客様の相談内容が音声から文字に変換され、オペレーターのPCに記録されます。オペレーターはその文字情報を逐次チェックしながら、問い合わせに真摯に向き合い、解決策をご提案し、お客様にご納得いただけるまで寄り添います。また、契約代行事務についても同様です。仲介会社様や管理会社様とお客様の間に私たちが介在し、チャット機能を使って細やかなコミュニケーションをさせていただきます」
ちなみに、同社では「AAA完了率」という独自の評価基準が設定されています。これは、オペレーティングスタッフがお客様から寄せられた諸問題を受け取り、解決に至るまで、すべてを行なうと一定の評価につながるというシステム。それらのデータを基に、クライアント企業様の社内会議に出席して、業務状況や分析結果を報告し、直面する課題を明らかにすることもあるのだそうです。
田所社長「さまざまなかたちでオペレーターの頑張りを『見える化』しているため、直接クライアント企業様からお褒めの言葉をいただくこともあります。イメージとしては、その企業様の一員として働いている感覚ですね。やりがいはとても大きい。私はこの仕事が、入居者様はもちろん、間接的にクライアント企業様を支える『究極のサポート業務』だと考えているんです」
業績アップで人材確保が急務に。事務局と二人三脚で課題を解決
奇しくも管理業務の代行事業に対するニーズはここ2〜3年で5倍ほどに膨らんでいるのだとか。理由はコロナ禍。「お隣の声がうるさい」、「ご近所の騒音が気になる」、「公共スペースの設備が故障している」など、従来は見過ごされていたことが、昨今のリモートワークや巣ごもり需要の増加で顕在化したのだろうと田所社長は語ります。 また、そういった市場動向やライフスタイルの変化を踏まえ、より行き届いたカスタマー対応が求められるようになったことも、この事業の急成長を後押ししたようです。
田所社長「ニーズが増えれば、その需要に応える体制づくりに努めなければなりません。当初はアルバイトやパートのみなさん、派遣社員の方々も含め、スタッフ一丸となってこの業務にあたっていましたが、優秀な人材の確保は常に課題となっていました。そこで、雇用創出・安定化支援事業を知り、弊社の採用計画に取り入れてみることを思い立ったのです」
しかし、その一方で、求職者のみなさんを正社員として受け入れることに少なからず抵抗感もあったといいます。正社員採用は、その人の人生を背負うことにつながります。これは多くの経営者が抱える悩みの一つかもしれません。
田所社長「どんなに能力が優れ、資格を持っていても、残念ながらその人に適正を見出せない場合があります。逆にご本人がこの仕事に熱意ややりがいを持てないこともあるでしょう。こうしたミスマッチはお互いを不幸にしてしまいます。そのため、これまでは人材派遣会社が紹介する派遣社員を中心に採用していました。正社員採用は今回のこの支援事業が初めての試みでした」
そこで、導入の決め手となったのは、事前にミスマッチを防げるトライアル就労です。
田所社長「この仕事が合っているか、時につらいと感じることもあるお客様対応に楽しんで取り組めるか、この会社に魅力を感じられるか。求職者のみなさんがご自身の考えや思いをまとめ、私たちはみなさんの適正を見定める。その期間があらかじめ設けられていて、しかもゼロコストで運用できるのは素晴らしい仕組みだと思います」
また、実際の人事・採用業務にあたっている帆足さんは、事務局担当者の存在について以下のように語ってくださいました。
帆足さん「求職者のみなさんをご紹介いただく前段階はもちろん、トライアル就労に入った後、終えた後も、頻繁にご連絡を取り合い、相談に乗っていただくことができました。いつしか何でもお話できる関係が構築できていったような気がします。弊社はクライアント企業様のチームの一員として業務を代行していますが、事務局のご担当者さんも私たちの採用部門を担う大切なチームの一員だと思っています」
帆足さんのお話に大きく頷きながら「もはや事務局さんは僕の分身だから」と田所社長は笑います。ご自身は、どんなに多忙でも必ず候補者と会話を交わし、その人となりを知る機会を積極的に作られているそうです。
チャンスを活かす。そのためにも受け入れ体制の整備を
この支援事業を「ぜひ今後も続けてもらいたい」と田所社長。採用候補者の見極めの難しさ、ミスマッチや定着率の問題など、さまざまな悩みを抱える企業にとって、「正社員を採用しよう! というきっかけになるのでは」と語ります。
田所社長「私たちはただ人員を増やしたいだけでなく、求職者のみなさんに弊社の業務を理解してもらうことと、就職後も楽しんで働いてもらえるような社内環境づくりに力を入れています」
例えば、同社のホームページは、管理業務のアウトソーシングを望むクライアント企業へ向け、自社をPRする目的から制作されたものですが、求職者に対する心配りやメッセージが散りばめられています。不動産業界における同社の役割がわかりやすく解説されている動画コンテンツは一見の価値あり。同社での仕事内容を把握する際にも役立つ構成となっています。
田所社長「不動産に関わる仕事であると漠然とわかってはいても、求人票に書かれている情報だけでは理解できないことってありますよね。弊社の代行業務は、不動産業の入り口でありながら、サービス業の入り口でもあるんです。少なくとも私どものホームページを見ていただければ、この仕事に興味を持てるか、真剣に取り組めそうかが判断できると思います」
また、採用後のさまざまな施策にもスタッフを大切にしたいという強い思いがあふれています。
田所社長「弊社にはブラザーシスター制度というものがあって、入社してから3か月間、先輩スタッフが新人を指導する期間を設けています。新しいスタッフにとっては不安の軽減につながりますし、教える側のスタッフにも成長を期待できます。また、この仕事はコミュニケーション能力がある程度不可欠ですが、中には話下手な人も一定数います。そこで、事務処理営業のアシスタントなど、そういう人が輝けるポジションを新たに設けたこともありました」
さらには社内の公用ツールとしてチャットアプリを導入。会社の情報や方向性、社内規則の変更といったお知らせを定期的に行なうなど、エンゲージメントを高める工夫もされているそうです。
田所社長「毎月スタッフ全員に、『仕事はどうですか?』、『スタッフ間のコミュニケーションは?』、『現在の健康状態は?』といった3つの質問をチャットで呼びかけ、月報代わりに近況を報告してもらうようにしています。チャットは毎日オープンにしているので率直な意見や相談事も結構上がってくるんですよ。マメにコミュニケーションを取っています」
経営陣が率先してスタッフと近い関係性を作り、社内の風通しをよくすることでスタッフ同士が支え合える環境を整える。その上で、こういった支援事業を活用して求職者を募る。田所社長は、「正社員として採用することがゴール」ではなく「正社員を採用した後の動機付けを提供してあげることが重要」だと語ります。これらは、今後この支援事業を通して人材を募集したいと考えている経営者や採用担当者のみなさんにとって、大いにヒントとなる取り組みかもしれません。
田所社長「せっかく東京都が求職者と企業を支援するために作ってくれた事業です。利用しない手はありません。この支援事業を通して就活にチャレンジしてくれる求職者のみなさんも増えているそうですね。まったく違った感性を持つ人材と出会えるチャンスだと思います」
- 事例紹介/企業プロフィール
- AAAコンサルティング株式会社
- コーポレートサイト:https://aaa-c.jp/
- 東京都中央区新川1-17-18 白鹿茅場町ビル7F
- 事業内容:不動産の開発、売買仲介、経営コンサルティング、プロパティマネジメントほか
- 従業員数:90名〜
- 取材撮影:2022年9月
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