思いがけない出会いをもたらした「トライアル就労」に、今後も期待しています。

株式会社ユルリカ_小田代表


株式会社ユルリカ/代表取締役 小田様
ライター 入口様

創業期から成長期へ。そこで直面した採用の難しさ

2021年に設立されたユルリカ社は、右肩上がりの成長を続ける気鋭のIT企業。その事業内容は2つに大別されます。まずは、ウェブサイト制作とそれに伴うブランディングやメディアの運営です。これまでの制作実績は100社超。多彩な現場で培ったノウハウを惜しみなく投入し、唯一無二のサイトを構築することはもちろん、公開後も継続的な情報発信やマーケティング支援を行なっています。

次に挙げられるのは、システムやアプリケーション開発。こちらは一般的な勤怠管理システムといった堅めのものから、VR、ARなど最新技術を駆使したものまで多岐にわたります。よいモノづくりを通して顧客企業をサポートするのが同社の理念であり使命。社名に込められているのは、テクノロジーの力で顧客企業の「ゆるり化」に貢献したいという願いです。

株式会社ユルリカ_小田代表

小田代表 「現在、私の出身地である鹿児島県や市と協定を結ぶ準備を進めている一方で、地元中小企業のIT化、DX支援をお手伝いしています。例えば、某ラジオ局の番組特設サイトを手掛けた案件では、権利関係の縛りで長期配信ができない音源を、AIによって文字情報に起こし、アーカイブ化するといった試みを行いました。また、多数のアルバイトスタッフを抱える事業者のお仕事ではシフト管理の自動生成ツールを開発しています。IT化の波は地方にも広がっています。その橋渡し役、旗振り役として、私たちはさまざまな企業様に技術やサービスを提供しているんです」

一昨年の創業時は、当時25歳だった小田代表たった一人の船出でした。それが現在は15名に。採用は前職で知り合った人たちや、その伝手を辿るリファラル採用がメイン。事業拡大とともに求人媒体への広告出稿も行いましたが、たびたび採用の難しさに直面されたといいます。

小田代表 「求人媒体での採用は、どうしても面接のみでの判断となり、入社後のミスマッチが大なり小なり確実に生じます。そんな時、商工会で配布されていたチラシを見て、成長産業人材雇用支援事業を知りました」

真っ先に惹かれたのは「トライアル就労」でした。正社員採用へと至る前に2か月間の助走期間があり、両者のマッチング度合いを見極めつつ、その間の給与コストなどを東京都が負担するという事業内容は、採用のミスマッチに悩む小田代表にとって魅力的に映ったそうです。

小田代表と入口さん

小田代表 「さっそく何名かの皆さんにトライアル就労を体験してもらいました。結果的にミスマッチの課題はある程度解決につながりましたが、予期していなかったメリットがあったんです。それは、リファラル採用では決して出会うことのなかった人材を採用できたことですね。ここにいる入口さんが、まさにその一人。彼女はこの支援事業で正社員になった2人目のスタッフ。ライター志望で、記事制作やコピーライティングを担当しています。ライターは私が得意とするフィールドにはいなかった畑違いの職域。彼女のおかげで、今までできなかった仕事をお引き受けしたり、外注するほかなかった案件を内製できるようになったりと、業務の幅が格段に広がりました」

事業者と求職者をつなぐ事務局スタッフの存在

一般的な求人媒体でも専門職を探すことは可能です。しかし、経験したことのないジャンルの人材を採用する際、豊富な知見を有する事務局スタッフの意見やアドバイスがプラスに作用します。判断時の大きな指針になるのは言うまでもありません。

小田代表 「求人媒体の場合は相当なコストがかかりましたが、この事業ではふさわしい候補者の皆さんをどんどん提案していただけます。なんでもご相談できる事務局スタッフさんにはとても感謝しているんですよ」

では、トライアル就労を経て、晴れてユルリカ社の正社員となった入口さんにもお話を伺ってみましょう。現在、入口さんは、彼女を含む計4名のライティングチームで、月400本以上のテキストワークをこなす多忙な日々を過ごしています。

トライアル就労から入社された入口さん

入口さん 「前職はPRマーケティング。プレスリリースの作成やSNSの運用に携わっていました。書くことが好きで、たまにウェブライティングの仕事をやっていたのですが、写真やデザイン、編集にも関心がありました。そこで一念発起。転職活動を始めた矢先、たまたま知人から〝トライアル就労という事業があるよ〟と聞いて、ウェブサイトから登録してみたのです」

その後、事務局スタッフやカウンセラーと面談。ちょうどライター職の人員拡充を考えていた小田代表のもとで、トライアル就労に挑戦する運びとなりました。

入口さん 「転職活動中にもライティングの仕事を続けていて、いっそこのままフリーランスになってもいいかなと思っていたんです。でも、トライアル就労の間、社長が私の仕事ぶりをつぶさに眺め、評価してくださっていると感じたのです。結局、この会社にお世話になる決意を固め、現在は主に不動産関係企業のオウンドメディアで記事制作を担当させてもらっています」

事務局スタッフ曰く、入口さんの社会人としての素養や心構えは群を抜くレベル。心配することは「何もなかった」と当時を振り返るように、あっという間に会社の雰囲気に溶け込んでいったそうです。

小田代表 「採用というのは面白いもので、時折ミスマッチとは真逆のことが起こるんです。入口さんもその典型です。最初は〝リモートワークで仕事がしたい〟と希望していたので一抹の不安を感じていました。当然、当社はリモートワークも可能な環境にあるのですが、実際に働き始めると、彼女はほぼ出社。誰よりも会社にいます(笑)。とにかく楽しく仕事をしてくれているのが何より。かなりの仕事量にも音を上げることなく頑張ってくれています」

そんな入口さんに、この事業を活用してよかったと思えるポイントをお聞きしてみました。

入口さんと小田代表

入口さん 「社長が話していらしたように、事務局スタッフさんは私たち求職者にとっても頼りになる存在です。条件面、とりわけ給与や残業の有無をいきなりご相談するのは気が引けてしまうものですよね。その点、気になることは事務局スタッフさんが間に立って導いてくださいます。それに、やっぱり2か月間のトライアル就労が大きかったですね。必死になって取り組めば、社内の皆さんに自分を認めてもらうことができますし、きっと自分の居場所を作れるはずだと考えていました。なりたい自分になれるチャンスをいただいたようなものです」

さらなる組織拡大を図る中で見えてきた新たな課題

小田代表 「実はあらかじめ見越していたのが経験豊富なIT人材を確保する難しさでした。システムやアプリ開発において、今は〝ノーコード(プログラム知識を要しない開発手法)〟や〝ローコード(ソースコードの記述量を最小限に抑える開発手法)〟で作ることが多く、当社の案件も高度なプログラミング技術を要するものと、そうでないものが半々ぐらい。未経験者でも3か月から半年程度頑張れば動けるものも少なくありません。つまり、スタッフのデジタルスキルを重視しなくても済む事業設計を行ってきたのです」

株式会社ユルリカ_社内

基本的に「スタッフに興味のないことをやらせても成果にはつながらない」というのが小田代表の経営スタンス。未経験者採用が多いユルリカ社では、入社後、各スタッフの希望によってジョブチェンジや配置転換が行われることがあり、それぞれの「やってみたい」を後押しする社風が醸成されています。

小田代表 「スタッフが輝ける仕事を探し、希望が叶えられる環境を用意してあげることが私の役割だと思っています。目の前にやらなければならない仕事があり、希望するポジションが埋まってしまっているなど、思い通りにはいかないこともあるでしょう。でも、この分野は常に新しいことが始まる可能性を秘めています。そこに自らの思いをフィットさせながら『やってみたい』を見つけていくことが重要ではないでしょうか」

その一方で、採用に関しては新たな課題も見えてきました。未経験者採用を優先してきたため、現場スタッフの拡充はスムーズに進められてきたものの、技術者を取りまとめるマネージメント人材が不足しているといいます。

小田代表 「できればデジタルに通じた経験者がいると心強いですね。現場をまとめあげ、引っ張っていくには、相応の知識と場数を踏んでいることが必須。今は私がその役目を担っていますが、分担できる人材の確保が急務です。入口さんにも期待しているんですよ。ライターとしてコンテンツを作り上げながら、徐々にデジタルの知見を広げていってくれたらいいですね」

ちなみに、「40代以上のIT業界未経験者を採用するとしたら?」という問いに、小田代表は「重要視したいのは頭の柔らかさです」と答えてくださいました。

小田代表 「新しいモノやコトを受け容れる柔軟性があって、コミュニケーションを円滑に進められる人でしょうか。前職での経験と掛け合わせ、人を育て、面倒を見ていくというチームマネジメントなら、この業界においてもニーズがあると思います。また、営業や企画から始めてみるのもいいでしょう。言い換えればプロデューサーやアカウントマネージャーと呼ばれる職域です。私自身もお客様との会話を重ね、ご提案をしている時が一番楽しいんです。この業界の営業職は、決まった商材を売り歩く一般的なセールスとは異なるので、そこからチャレンジして専門的な知見を広げていくのも手だと思います」

来年は、さらに採用枠を増やし、30名規模を目指すという小田代表。10年後の上場を見据え、その準備にも余念がありません。採用人事はその要。今後もこの支援事業を通じて、まだ見ぬ新たなスタッフとの出会いに期待していると語ります。

株式会社ユルリカ_小田代表

事例紹介/企業プロフィール
株式会社ユルリカ
コーポレートサイト:https://yurulica.com
東京都新宿区荒木町20-16 Aビル4F
事業内容:ウェブサイト制作、システム・アプリケーション開発、ゲーム開発、メディア運営
従業員数:15名
取材撮影:2024年7月
※本事業を活用し、2名正社員として採用