CASE3導入事例 
武蔵野硝子株式会社様

直面した、卸売業という業態における採用の難しさ。
そこに寄り添ってくれたのがこの支援事業です。

武蔵野硝子株式会社/代表取締役社長 伊藤様 吉祥寺支店支店長 天野様

大切なのは能力よりも、人に、仕事に、向き合う心

1965年(昭和40年)の創業以来、板ガラスや窓といった住宅関連資材の卸売業を生業にしてきた武蔵野硝子株式会社。世界最大級のガラスメーカーであるAGCの特約店として、あるいは住宅設備機器業界の最大手企業LIXILの代理店として、全国でも屈指の販売実績を残しながら、長年地域に根ざした事業活動を行なってきました。現在はインテリア建材のみならず、玄関ドアや引き戸、エクステリア建材、ビルやマンションのフロント部材を幅広く取り扱い、太陽光発電システムの施工など、住まいづくりに関する多彩な製品やノウハウを提供し続けています。

卸売業はメーカーと販売店をつなぐ、いわば橋渡し役。メーカーが開発・供給する膨大な製品群を把握し、その品質を広くアピールしつつ、管理と物流までを担う大切な存在です。ご祖父様が創業したこの会社を守り継ぎ、現在社長として経営を担う伊藤社長が、まず製品の流通過程において不可欠な卸売業の役割と、それを支えるスタッフに求める資質について教えてくれました。

伊藤社長「私たちのお客様は販売店の皆様です。販売店様は、その先の小売店様や工務店様に対し、正しい商品情報とその価値をお伝えして製品を売り込まなければなりません。お取引の相手はどなたもその道のプロフェッショナル。スタッフには、そういった方々とコミュニケーションを取ることができるだけの知識と度量が求められるでしょうね」

とはいえ、住まいづくりにおける基礎知識や、多岐にわたる製品の種類、特性を覚えるには、当然ながら相応の探究心や忍耐力を要します。ゆえに「何よりもこの仕事に対して興味を持つことが大切」とおっしゃるのが、採用業務にも関わる天野支店長でした。

天野支店長「インテリア建材にしろ、エクステリア建材にしろ、『家を建てるということ』を自分ごととして考えた人でなければ、なかなかその知識を一朝一夕で吸収できるものではありません。また、既存商品に加え、時代の変化に合わせて新商品も続々と開発されていきます。とにかく取り扱う商品群が多いので、アタマのやわらかい若い世代の皆さんに期待するところが大きいんです」

そして、商いのお相手は、そのほとんどが販売店を営む経営者の皆様。人物を見極める目の肥えた方々です。直にお客様と接する機会が多い営業職や配送業務担当はもちろん、事務職でも、さまざまなお問い合わせに応えなければならない場面があるといいます。その際に大切なのは「信頼関係を築くこと」だと伊藤社長はおっしゃっていました。

伊藤社長「信頼を得るためには、誠実であること、素直であることが必須。学ぼうという姿勢があれば、先輩や上司が喜んでサポートしてくれますし、きっとお客様から教わることもあるでしょう。スタッフに常々言っているのは『自分は何ができるのか、したいのか』ではなく、『この会社で自分をどう活かせるか』、『いかに仕事を楽しめるか』、『この会社が好きになれるか』ということ。最初はわからないことも多いと思いますが、腹を括って取り組み、お客様に寄り添うことで、拓けてくるビジョンがあると思うんです」

事務局の営業担当者にも感じた強い信頼

もともとリクルーティングには他の手段を活用していたという伊藤社長。しかし、そこには課題が多く、求職者と面接をするたびに違和感を募らせていたといいます。

伊藤社長「これは一般的な求人広告メディアにもいえることですが、求人票を一見しただけでは、弊社がどういった企業で、どのような人材を求めているかはわかりませんよね。的確な情報がどれだけ求職者の皆さんに届いているのかが、やや心配でした」

その点、雇用創出・安定化支援事業の事務局には、さまざまな企業の人材採用で培ったノウハウと分析力が蓄積されています。営業担当者が伊藤社長や天野支店長とのミーティングを重ね、意向を汲み、ご紹介にいたるという一連の流れに好感を抱いたといいます。

伊藤社長「事務局の営業担当者さんは何度も足を運んでくださいました。弊社をとことん知ろう、理解しようとされているのが手に取るようにわかり、安心感や信頼感が醸成されていったんです。多くの企業さんの声を聞いていらっしゃるからでしょうね。経験値と咀嚼力の素晴らしさにも驚きました」

一方、天野支店長は、この支援事業に対して期待した魅力の一つにトライアル就労を挙げてくださいました。

天野支店長「社長も申し上げたように、弊社の業務体系や商材は、なかなか隅々まで理解することが難しく、新人社員が一人前になるのはそれなりの時間と経験が必要になります。私自身もゼロベースからスタートを切った一人。ほぼすべてのスタッフがそうだと思います。ですから、トライアル就労は、求職者の皆さんに何かを教え、物事を深く知ってもらうというよりも、この業界そのものに興味を持つ助走期間にしていただこうと考えていました」

そして事務局がご紹介したのが稲垣さん。1か月にわたるトライアル就労を経て、昨年10月に正社員採用が叶いました。

伊藤社長は彼女の仕事ぶりを評価したと同時に「そんな彼女を推してくれた営業担当者さんにも惚れ込んでしまったんです(笑)」とのこと。ファーストインプレッションで芽生えた信頼感は、その後も徐々に大きくなっていったのだとか。結果、同社ではこの制度を継続させ、現在までさらに3名の求職者が正社員採用に至っています。

出会いは「ご縁」、その縁を大切にしていきたい

伊藤社長はこれまでさまざまな人との出会いがご縁となり、別のご縁が生まれ、仲間の輪が広がっていったと、数々のエピソードを挙げてくださいました。この支援事業を自社の採用戦略に取り入れようと決断されたのも、偶然に偶然が重なった事務局営業担当者との出会いによるものだったとか。そして求職者との出会いも、同じように貴重なご縁だといいます。

また、この制度を使って正社員になった稲垣さんに加え、同じ業務部に配属された畠内さん、菰田さん、配送担当として入社した上山さんにもお話を伺うことができました。

稲垣さんは、地方都市から上京して求職活動を開始。前職では販売に携わっていたそうですが、なかなか採用に至らず、キャリアチェンジも視野に入れた仕事探しを続けたのだそうです。

稲垣さん「蓄えを切り崩しながらの求職活動だったので、いよいよアルバイトをしなければならないといった状況でした。そんな中、未経験者であるという不安を抱えながら、背水の陣で臨んだトライアル就労。聞きなれない単語が飛び交い、覚えなければいけないことがたくさんあって毎日が必死でしたが、この1か月間があったことで会社の雰囲気になじめたのが本当によかったと思います。でも、もうすぐ1年が経とうとしていますが、いまだに勉強の連続です(笑)。それでも、お客様から寄せられる疑問に答えたり、お話を伺ったりしている時間がとても楽しいんです。おかげさまで充実した日々を送らせていただいています」
今夏、採用された畠内さん、菰田さんもまた、稲垣さんと同様に業界未経験からの転職組。Web広告等でこの支援事業を知り、迷うことなくトライアル就労への挑戦を決めたのだといいます。「自分自身、どんな仕事が向いているかがわからなかったので、この会社、仕事に導いてくれた事務局のスタッフさんにはとても感謝しています」と畠内さん。
一方、菰田さんも「先輩たちにご迷惑をかけてばかりですが、いただいたチャンスを活かし自分なりに頑張っていきたいと思います」と意気揚々。お二人ともまだまだ戸惑うことばかりだといいますが、ご自身の目指すべき方向性が見つけられた歓びと充足感が、その表情に浮かんでいました。

また、取材が終わる頃、担当のルート配送業務から戻られた上山さんにもお話を伺いました。額に汗を滲ませながらも、一仕事を終えたばかりの上山さんはホッとした様子。

「大切な商材をお届けする責任がありますし、お客様からリクエストをいただくこともあるため、緊張する場面が多々あります。でも、それだけにやりがいも感じています」と笑顔でお話ししてくれました。

そして、社員を温かく見守りながら、伊藤社長が最後に話してくださった言葉が印象的でした。

伊藤社長「自分の好きなことを見つけられる人は幸せだと思います。でも、希望した道に進めたとしても、もしかしたら思いがけない壁に突き当たるかもしれない。会社に行くのがイヤになってしまうこともあるでしょう。でも、そこで諦めてしまったら、たとえ別の道に進んでもきっと同じことを繰り返します。とにかく日々を『謳歌する』こと。彼ら、彼女らのように、弊社で過ごす毎日を大いに楽しんでくれるスタッフなら大歓迎。とことんバックアップします!

実際に体験し、触れてみなければ、その醍醐味がわからない職種は世にあふれています。また、働くことへの意欲や心意気を携えていても、自らの将来ビジョンを描けずに悩んでいる求職者の皆さんも多いことでしょう。同社の採用事例は、まさに双方のマッチングを実現させた好例。求職者の皆さんのさらなるご活躍を願わずにはいられません。

事例紹介/企業プロフィール
武蔵野硝子株式会社
コーポレートサイト:http://www.musashino-glass.co.jp/
東京都武蔵野市吉祥寺北町1-24-1
事業内容:AGC株式会社特約店、株式会社LIXIL代理店
アルミサッシ・板ガラス・建材・エクステリア・住建等住宅関連資材の卸販売およびフロント・エクステリア・太陽光発電システムの施工など
従業員数:70名
取材撮影:2022年9月