デジタル業界と並び、注目を集めている成長産業が「GX」と「インバウンド」に関連する業界ではないでしょうか。異業種から新たなフィールドに挑戦したいと考えた際、何かと気になるこの2つの分野。それぞれの職域で働く意義や魅力を解説します。
脱炭素、SDGs、GX(グリーントランスフォーメーション)……。温室効果ガスの影響によって気候変動が深刻化する昨今、これらのキーワードが、にわかにクローズアップされるようになってきました。
地球温暖化を抑制するために重要なのは脱炭素社会の実現です。いまや世界中の企業がこの視点を取り入れ、喫緊の課題として脱炭素化経営に取り組んでいます。これは、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入を推進することで温室効果ガスの排出を減らし、最終的には実質ゼロを目指しながら、持続可能な社会形成に貢献しようとするものです。
また、企業がデジタル技術を積極的に導入して業務の効率化を図るDX(デジタルトランスフォーメーション)も、仕事のデジタル化やペーパーレスなどによって省エネや省資源につながっていますが、本来の目的は新しいビジネスモデルの創出や企業価値の向上にあります。脱炭素化と経済成長を両立させる取組としては、クリーンエネルギー中心の社会への転換を目指すGXが挙げられるでしょう。
今、若者の価値観は「どの企業で働くか?」よりも「どんな仕事に就くか?」にシフトしています。特にZ世代はサステナビリティやエコフレンドリーに敏感で、持続的な社会の実現や脱炭素化に積極的な企業に魅力を感じる傾向にあるのだとか。せっかくならご自分の仕事にやりがいを持ち、社会に貢献できる仕事を選んでみてはいかがでしょうか。
GXは、各方面から将来性の高い成長分野として注目を浴びています。ここでは、その技術を創り出し、提供する、さまざまな関連業界をご紹介します。
まず、GXで最も基本的な取組は再生可能エネルギーの導入です。化石燃料に頼らないクリーンエネルギーといえば、太陽光発電、風力発電などがありますが、こうした新エネルギーの研究や開発、供給を担っているインフラ企業は、人々の暮らしに欠かせない業界として引き続き高い人気をキープしています。
次に挙げられるのは、太陽光パネルや風力発電用タービンなどを開発・製造する、発電設備製造業界でしょう。技術開発や設計、建設はもとより、運用やメンテナンスを含め、さらなる成長と発展が期待されています。
クリーンエネルギーを作りだすことと並んで重要なのが、エネルギーの使用量を減らすことです。事業者向けの大規模な省エネ設備をはじめ、個人向けの家電を製造・販売するメーカーなど、幅広い分野の製造業が続々とGX分野に参入しています。
世界的に拡大するエネルギー市場において、そのテクノロジーを開発するスタートアップ企業やベンチャー企業、さまざまなノウハウを提供しながら企業のGX化を支援する事業者なども、今後のエネルギー産業を牽引する重要な存在です。
GXの普及・実現において注目されているのが、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を作る建設業およびハウスメーカーです。省エネ・再エネ機器を設計段階から組み入れたり、断熱性や気密性を向上させ冷暖房効率を高めた建物を建築したりするなど、GX達成に貢献しています。
もちろん、GXに直接関連する業界ばかりでなく、自社でGXに取り組み、環境・エネルギー対策を通してブランド価値を高め、新しいビジネスチャンスを創出している企業もたくさんあります。脱炭素を最重要課題として位置付けている各企業では、サステナビリティ推進部(室)やグリーン推進部といった専門部署を立ち上げ、カーボンニュートラルや温室効果ガスの〝見える化〟に取り組んでいます。あらゆる分野においてGX人材に対するニーズが急激に高まっているため、そういった職域での活躍を目指すことも可能でしょう。
GXの推進・実践は、優秀な人材を獲得したい企業にとって、いまや自社の魅力をアピールできる訴求ポイントの一つ。これは、新たな分野に飛び込みたいと考えている求職者の皆さんにとっても、仕事選びのファクターとなりえるのではないでしょうか。
これから右肩上がりの成長を遂げる産業として期待されているものの一つに、インバウンド業界があります。日本政府観光局(JNTO)の統計データによると、日本を観光で訪れる訪日外国人の「旅行消費額」は、2019年に4.8兆円を超え、一時コロナ禍によって激減してしまいましたが、2023年には回復傾向を見せ、最終的に5.3兆円を達成。過去最高額を更新しました。日本は魅力的な観光資源が豊富で、今後も円安を追い風として堅調に伸びていくことが予想されています。
さて、ひと口にインバウンド業界といっても、その業態や職種は多種多様です。代表的なものとしては、旅行斡旋企業やツアー企画会社などの旅行業、ホテルや旅館といった宿泊業、航空会社や電車、バス、タクシーなど交通業が挙げられます。全国各地の観光スポットにある小売業、飲食業、サービス業などもこれに含まれます。
また、旅に関連する企業ばかりではありません。訪日した外国人向けのプロモーションや情報発信に特化したメディア運営、アプリ開発、外国人のニーズを分析するマーケティング業やコンサルティング業など、拡大するインバウンド需要を見越した新しいビジネスモデルが続々と登場しています。
外国人が”日本”を楽しむのに欠かせないのがデジタルの力。今後も注目が集まります。
インバウンド業界は、海外から訪れる外国人を対象とするため、ある程度の語学力を身に付けることが条件となってきます。例えば英語なら、TOEICで高得点を目指したり、英会話スクールでビジネス英語を学んだり、ご自身の語学力を磨けば転職に役立ちます。また最近では、中国語、韓国語などのニーズも高まっています。特別な資格が必ずしも必要とは限りませんが、「観光英語検定」や「全国通訳案内士」、「旅行地理検定」、「日本の宿 おもてなし検定」などの資格検定試験が設けられているので、ご自身が進みたい職種に応じて学習に取り組んでみるのもいいかもしれません。
また、インバウンド業界にカテゴライズされる多くの職種は、日本での滞在を楽しもうとやって来る外国人観光客の、旅の思い出づくりをサポートできる仕事です。1番のやりがいはお客様に喜んでもらえることに尽きるでしょう。さらに異なる文化を持つ訪日外国人たちと接することで、新しい発見や学びが得られることも大きなメリットです。
停滞する日本経済の起爆剤として期待されるインバウンドは、国の成長戦略の柱としてさらなる発展が見込まれている分野です。サービス精神があって人とコミュニケーションを交わすのが好きな人、外国の文化やマナーに興味がある人、常に探究心を携えて自国の知識をアップデートできる人、日本文化を発信できる人は、この分野にぴったりな人材かもしれません。
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